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『新聞消滅大国アメリカ』

『新聞消滅大国アメリカ』
鈴木伸元
幻冬舎新書、2010/5/10、¥750(BO¥400)

アメリカでは日本でいう全国紙に近い大手新聞社、都市圏をカバーする都市型新聞社、コミュニティ紙に近い小さな新聞社などがあるが、2004年に1457紙あったが、2008年には1408紙に減った。発行部数も全米で5460万部から4860万部まで10%を超える落ち込みを記録した。2009年以降もその流れは加速している。
新聞に取って代わるメディアは、ネットであると考えられるが、人間を使って取材をし、報道する機能を経営的に維持できるモデルは見つからない。ルパート・マードックが新聞ネット配信の有料化に踏み切る一方、広告モデルによる無料配信を選ぶ新聞社もある。
新聞がなくなると、権力の監視ができず、汚職が発生し、民主主義に危機をもたらす。
アメリカでは収入の8割を広告に依存しているのに対し、日本ではその割合は3割で、販売収入が7割を占めるため、アメリカほどの落ち込みはまだない。

アメリカの新聞事情の客観的な状況報告の部分は大変参考になる。しかし、著者はNHK社員なので、既存メディア寄りの考え方が随所に現れる。報道機関のもっとも基本的な役割は「社会正義の監視役」(p.190)であると主張するが、日本のメディアがその役割を十分に果たしていない以上、著者の主張に素直には同意できない。
また、日本の新聞社でもすでに毎日新聞は中間期3期連続赤字を計上するなど、経営的に追いつめられつつあり、著者の想像を超えた速度で構造変化が起きている。しかしその先の姿がまだ見えないところが、印刷業に携わる人間として辛いところではある。

「いま大きなパラダイムチェンジが起きている。レコードやカセットテープがCDに取って代わられたように、市場が求める新しいメディアを開発するしかない」(サンフランシスコ・クロニクル社のエリソン氏、p.65)

2009年5月の上院議会合同商務委員会によるマスコミ関係者を集めた公聴会には、グーグルの副社長マリッサ・メイヤーも招かれ、読者の側の変化について興味深いことを発言している。
「消費者は"個別の消費"に移っている。例えば音楽の世界では、アルバムを丸々一枚買わず、自分が気に入った曲だけを選んでネット上で購入している。読者はあらゆるニュースを盛り込んだ紙面ではなく、気になる記事だけを選ぶという購読スタイルを強めているのだ」(pp.67-68)

そもそもインターネットで流通しているニュースも、新聞社など既存のメディアからの記事がもとになっているものが大半と言ってよい。その新聞がなくなったとき、読者が現在と同じようにインターネットから必要な情報を得られるという保証はない。(p.101)

[ニューザー社社長マイケル・]ウォルフの基本的な考え方はこうだ。ニュースに対する人々の欲求は減ってはいない、むしろニュースを求める人々の欲求は世界が複雑化するとともに増大している。問題なのは、それをどういう手段によって伝達するかである。(p.194)

インターネット上では、ニュースの中身(コンテンツ)が優れているかどうかよりも、入り口としてどれだけ多くのアクセスの窓口を持っているかが勝敗を分けてしまう。(p.107)

グーグルも、一度は新聞社というニュース・メディアの中心的存在に関心を持った。しかし、最終的には一時情報を取材し記事を執筆するという従来の新聞社のビジネス・モデルには魅力を感じなかった。誰かが集めてきた情報を、インターネット上でうまく回転させる高度な技術を開発し、収益を上げる方がはるかに実入りがよいと、グーグルの経営陣は判断したのだ。(p.108)

[グーグルのCEO] シュミットは、2015年を新しい時代の幕開けと位置づけている。携帯端末の普及によって、印刷された紙面を読むのと同じように、オンラインで新聞を読める時代がやってくる。さらに日本語など外国語の新聞も自動的に翻訳されて、その携帯端末で読むことができるようになると言うのだ。(p.109)

プリンストン大学の研究者が、新聞がなくなることの影響を、データをもとに実証的に分析したこの[2009年3月の「新聞は重要か」という論文は]大きな反響を呼び、アメリカのみならず、日本でも頻繁に引用されている。(p.139)

新聞が衰退する一方で、大きな注目を集めているのが、調査報道を行うニュースサイトだ。ここ数年の間に、これまで新聞が担ってきた調査報道を専門に行い、ニュースサイトにNPOの組織が、アメリカ各地で次々と誕生している。(p.154)

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