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『催眠』(小学館版)

『催眠―Hypnosis』 (小学館文庫)
松岡圭祐
小学館文庫、1999/5/1

ニセ催眠術師の前に現れた女は、自分は宇宙人だと叫び始めた。入絵由香の異常な能力を見て、心理カウンセラー嵯峨敏也は精神の病を疑う。

『万能鑑定士Q』が面白かったので、著者のデビュー作を読んだ。由香の両親の描き方など人物描写に若干一貫性を欠くところが見られるが、十分に楽しめる小説になっていた。角川文庫版では精神医学の進歩を取り入れた改訂がされているということなので、そちらも読んでみたい。

「いまのパチンコ台はたくさんの電飾がついていて、ひっきりなしに点滅している。光の不規則な点滅は、意識がほかにそれるのを防ぎ、受動的な注意集中状態をつくりだす。一点を見つめながら、リラックスしてよそごとが考えにくくなるんだ。アルファ波の脳波がさらに安静な状態へと変化し、シータ波までいたることもある。ここまでくると、起きているときと眠っているときの中間ぐらいの、きわめて心地よいトランス状態に入っていることになる」(p.132)

この両親は世間の常識にあまりにも疎かった。学問に無頓着すぎた。江戸っ子をきどり、人情に厚いことを誇りに思っているが、それは本当の社会を知らない証でもあった。ひたすら人情をもってすれば、あらゆる知識や権威を駆逐できると信じきっている。しかしそれは幻想にすぎない。(p.302)

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