« 『電子本をバカにするなかれ 書物史の第三の革命』 | トップページ | 第159回TOEIC結果 »

『企画書は1行』

『企画書は1行』
野地秩嘉
光文社新書、2006/6/20、¥700(BO¥350)

やりたいこと、自分の思いをできる限り短く、1行にまとめ、相手に「面白い企画だ、それをやろう」と言わせる。それがよい企画書というのが著者の主張で、様々な分野の人物を取材して例を挙げる。
本書のキャッチコピー「できる限り短く。本当にやりたいことを書く。その一点に想いを込める」は、それ自体が一行の企画書になっていて、とても説得力がある。
本当にやりたいこと、伝えたいことは一行、一言で言えるはずなのだ、ということだろう。

「2004年の3月まで放送していた『お厚いのがお好き?』という番組があります。世界が最も難しい本を、世界で最も易しく読み解くテレビ番組と銘打ち、マルクスの『資本論』、プルーストお『失われた時を求めて』、ニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』といった、僕のまわりでは誰ひとり読んだことのないような分厚い本を解説する番組でした。その企画書を書くとき、僕は最初の一ページに渾身の力を込めました。しかも、言いたかったことは、たっだ一行。 『君はキルケゴールも読んだことがないのか?』[略] もちろん僕自身もキルケゴールなんて誰ひとり読んでるはずがない。しかし、この一行はインパクトがあった。みんな、一瞬、シーンとなって、そのうちに誰が言うでもなく、この企画やろうか、となった。[略]」(小山薫堂、放送作家、pp.10-11)

膨大な経費と時間がかかる場合は別として、試作品を提示した方が企画を通すには早道と思える。いくら立派な企画書であっても、すべてを文書で乗り切れるわけではない。(p.54)

「私の企画書はすべて新商品の開発です。けれども、新商品といっても、モノだけを考えていてはイメージは膨らみません。出来上がった商品を使うシーンを思い浮かべることから始めます。
そのためには、まず私自身がお客様になってみて、商品と一緒にいる場面を想像します。性別、年齢、職業、環境、すべての面で別人格となって、新商品を飲む人間になりきるのです」(和田徹、キリンビール、p.54)

「私には企画書を書きながら常に頭に置いていることがあります。それは未来のお客さまがおいしそうに、あるいは満足そうに商品を飲んでいる姿を頭に描くこと。なんだ、きれいごとじゃないかと思う人もいるでしょう。しかし、企画書を改良していく時には、頭のなかにいる未来のお客さまに問いかけながら作業をすることにしています。自信のある商品でなければ、未来のお客さまが幸せそうにしている笑顔は浮かんできません。『氷結』はそうやって開発した商品です」(和田、p.58)

「論議を続けるなかで出てきたのが、『健康』と『環境』という言葉です。健康家電、環境家電という方向性を決めたことが、ヘルシオの誕生に結びつきました」(井上隆、シャープ、p.71)

努力が実って、舟木[一夫]さんは東京、大阪、名古屋の大劇場で講演をやり、どの会場でも月刊10万人の観客を動員できる歌手となりました。彼のいいところは常に全力投球するところです。絶対に手を抜かない」(伊藤喜久雄、アイエス、p.99)

「60代の女性は元気で知的です。ダンナは定年退職して収入が減り、消極的になって外出もしなくなる。それに比べて女性たちはダンナにかまわずに、活発に外へ出かけます。海外旅行も友人と行く。
忘れてはならないのは、彼女たちは古臭いものが嫌いなこと。彼女たちは古いものに価値を見いだしてはいない。懐かしいものに愛着があるんです。私は『懐かしいものが新しい』という一行の企画書を作り、それを宣伝にも使いました。ですから私が企画したライブはすべてそれがテーマです。[舟木一夫、橋幸夫、西行輝彦の]御三家も、ピンク・レディーも、マツケンサンバも、すべて古いのではなく、懐かしい香りがするのです」(伊藤、p.100)

「私はタレントを口説く時も、スポンサーと交渉する時も、重要なシーンでは書類を出しません。すべて口立てです。言葉で企画を説明する。
使う言葉は新聞から借用します。インパクトのある言葉、印象に残ったフレーズを見つけたら拡大コピーする。部屋に貼って、眺めているうちに言葉が体のなかに入ってきます。言葉が身についてから、相手を説得する。私がやっているのはそれだけ」(伊藤、pp.102-103)

彼[伊藤]の社長室を見た。壁じゅうにたくさんのコピーが貼られており、なかには黄ばんだものも。新聞の種類はさまざまだが、「日経流通新聞が最も役に立つ」という。(p.103)

「遠いところにボールを投げる」精神がJFAの企画書に含まれている。
「日本サッカー協会は成長企業だよ。[略] なぜJFAが成長できたかといえば、つねに大きな目標設定をしてきたからです」(川淵三郎、JFA、p.112)

「[企画書に] どうしてもこれを言いたいと書いたのが『ガバナンス』についてでした。つまり、どうやって会社を運営していくかという根本を明確にしたかった。
とくに力を入れたのがふたつです。ひとつは会社経営は商法の規定通りにやろう、と。たとえば株主の権利とは総会に出席して議決権を行使することと法律には書かれている。ところが日本の企業では大株主になると、なぜか隠然たる力をもったりするわけです。『暗黙の了解』とか『えもいわれぬ慣習』といったものはすべて排除して法律通りに経営する会社だとまずは宣言しました。
もうひとつは理念を貫くこと。簡単に言えば創立メンバー以外でも、優秀であれば社長に迎える会社でいよう、と。創業メンバーはストックオプションをもらったら、それでおしまい。外から来た人でも上位に登用される組織でありたい。それを実現したかった。商法と契約と理念の会社にしたいと考えた」
(松本大、マネックス証券、pp.144-145)

「インターネットのような流れの速いビジネスの場合、紙に書いても、すぐに内容が陳腐化してしまう。そして、少しでも古いデータが入っていたりすると、先方の従業員から必ずチェックされます。
また、大きな組織に初めから企画書を渡したら、事業に関係のある大勢のスタッフが出てきて、企画書の検討会になってしまう。それは嫌だった。それに対して、私が社長としてひとりで出て行けば、相手の組織はそれなりに処遇してくれます。
ある程度の肩書きの人が出てきますから、その人に対して私自身がビジネスプランです、と説明すればいい。私は企画書を完成させることよりも企画を通すことを大事にしたのです」(松本、p.148)

「クライアントがプレゼンに期待しているのは、広告の表現を知ることなんです。そこに気づいた私は企画書を出さずに、すぐに広告表現のアイデアを伝えることにしました。[略] クライアントが真に欲しているのは企画書の存在ではない。優れた広告のアイデアなんです」(岡康道、タグボート、pp.212-213)

私たちが彼[岡]から「企画書の一行の作り方」を学ぶとすれば、それはまず頭のなかにしっかりと映像を結ぶことだ。キーワードを思いついた程度で企画書をまとめてはいけない。企画の完成形をディテールまで映像化した後で筆を執るのだ。(p.220)

[短い言葉が持つ力について]「私は名前だと思います。商品の名前、会社の名前・・・。いい名前には言葉が持つ力が感じられる。[略] だから、名前はとても大切です。ネーミングには気持ちを込めなくてはいけません。タグボートという社名には僕ら四人の志が入っている。タグボートは小さくて汚い船かもしれない。でも、広告界を引っ張ってみせるという気概が込めてある。
名前は短い。一行の文字です。でも、そこに意味を含ませるとイメージは無限大に広がる。どこか広告の表現に通じるところがある。僕はそんな気がしています」(岡、pp.220-221)

シー・ユー・チェン氏は05年、著書を出版。内容の濃い本(『インプレサリオー成功請負人』ダイヤモンド社)である。(p.225)


|

« 『電子本をバカにするなかれ 書物史の第三の革命』 | トップページ | 第159回TOEIC結果 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/40886/50407540

この記事へのトラックバック一覧です: 『企画書は1行』:

« 『電子本をバカにするなかれ 書物史の第三の革命』 | トップページ | 第159回TOEIC結果 »