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フリー

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
クリス・アンダーソン
NHK出版、2009/11/21

ロングテール理論で有名になった著者の、ネット時代の価格戦略についての新著。
従来型の産業と、インターネット上の情報では、価格の成立の仕方が根本的に違う、という認識に立って、ではどのように事業として成立させるか=収入の道を確保するか、ということを説いた本。
一時期、あまりにも騒がれたので、多分買うほどの価値はないだろうと思って、図書館で借りた。
ロングテール理論が、結局アンダーソンが説いたようにはテール部分が栄えず、むしろグーグル、アマゾンなどインフラを持つヘッドをより太らせる結果に終わったように、フリー理論も、今後の進展を見てからでないと評価できない。

アトム経済においては、私たちのまわりにあるたいていのものは、時間とともに価格が高くなる。一方、御ライオンの世界であるビット経済においては、ものは安くなりつづける。アトム経済はインフレ状態だが、ビット経済はデフレ状態なのだ。(p.22)

消費者が集まるコミュニティがないかぎり、本やビデオや雑誌を出すことは考えられません。結局、物語性の問題なのです。人々は物語の始まりや中盤、結末や筋を知りたがるのです。どこかに購入ボタンがあれば、彼らはときどきそれをクリックして、私たちがまじめに働いていることに対してご褒美をくれるのです。(p.94、アダフルート・インダストリーズ共同経営者フィリップ・トロン)

潤沢な情報は無料になりたがる。稀少な情報は高価になりたがる。(p.130)

これがフリーの成すことだ。十億ドル産業を百万ドル産業に変えてしまう。だが、見た目通りに富が消滅するわけではなく、富は計測しにくい形で再配分されるのだ。(p.175)

ノンフィクション書籍、とりわけビジネス書を無料にする場合は、無料音楽を手本としていることが多い。限界費用の低いデジタル書籍は、限界費用の高い講演やコンサルティング業務のためのマーケティング手法となっている。コンサートのために音楽を無料で提供するのと同じだ。消費者は、著者の全般的なアイデアを無料で得られる。しかし、もし特定の会社や業界、または投資家向けの会議にカスタマイズされたアイデアを知りたい場合は、著者の希少な時間に対して料金を支払う必要がある。(p.214)

<ベルトラン競争>を簡単に言うと次のようになる。競争市場においては、価格は限界費用まで下落する。(p.227)

インターネットとは、民主化された生産ツール(コンピュータ)と民主化された流通ツール(ネットワーク)が合体したもので、ベルトランが頭の中だけで考えた現象を実現した。そう、真の競争市場である。(p.231)

これはムダを受け入れるための教訓だ。カーヴァー・ミードはトランジスタをムダにすることを説き、アラン・ケイがそれに応えて視覚的に楽しいGUIをつくり、それによってコンピュータが使いやすいものになった。それと同じで今日の革新者とは、新たに潤沢になったものに着目して、それをどのように浪費すればいいかを考えつく人なのだ。うまく浪費する方法を。(p.253)

広東ポップの不正配信サイトが、音楽業界から売り上げを奪う一方で人気スターを生んでいるように、不正コピー業者はただたんに他人のデザインを盗んでもうけているだけではない。そのデザイナーのために、コストなしでブランドを広める役目を果たしているのだ。(p.269)

SF作家にはひとつの不文律があるー物理学の法則を破るのは、ひとつの小説につきひとつかふたつまでで、それ以外は現実を踏襲する、というものだ。[略]SF小説のおもしろさは、ルールが変わったときに、人間がどうふるまうかを見ることにあるのだ。(p.276)

今日では、フリーミアム(少数の有料利用者が多くの無料利用者を支えるモデル)が急速に広がっている。(p.293)

ウェブは主にふたつの非貨幣単位で構成されている。注目(トラフィック)と評判(リンク)だ。両方とも、無料のコンテンツとサービスにおいてとても重要なものだ。そして、グーグルのバランスシートを見れば一目瞭然なように、このふたつの通貨のどちらかでも金銭に変えるのはとても簡単なのだ。(pp.296-297)

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