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ザ・取り立て

ザ・取り立て
別冊宝島編集部
宝島社文庫、2000/1/1

取立屋の論理、債務者の言い分、債権回収の攻防、商工ローン地獄の各章から成る。ちょうど日栄商工ファンドが問題になった頃、不動産融資総量規制に始まるバブル崩壊が本格的になった頃の債権回収を巡る事象を関係するそれぞれの立場から描いている。
発刊から10年経っているので、やや古くなっている部分もあるが、実際本書に書かれたようなことを経験していたので、今も冷静では読めなかった。

こと金になると人間を変えられる。金のないのは首のないのと同じ、と心底思い、貸した金を取り立てられないときは自分の首がなくなる、と考える。首がなければ生きていけない。だったら、金を取り立てる。すべてこの精神よ。そしたらヤクザだろうが何だろうがいっこうに怖くない。ここまでが金貸しとしての基礎だね。(総合街金株式会社、p.114)

午後二時、水田は、車を運転して会社へ向かった。車中、公共職業安定所に電話を入れ、これから手数をおかけします、と会社が倒産したことを伝えた。そのほか、商工会や町長など今後世話になりそうなところに電話をかけた。会社には債権者に対する説明会の件を伝えた。午後五時半に町役場の会議室に集まってもらうことにした。(ある連帯保証人の悲劇、p.153)

最初は、善人ぶって同情するそぶりを見せていたが、最後は「隠しているお金を二百万円払えば許してやる」と言い始めた。しかし、水谷は、自己破産を申請する弁護士の費用すら持ち合わせていなかった。倒産に遭遇して、いろいろな人から知識を吹き込まれた。離婚を勧められたり、街金に手形が回らないうちに逃げろと忠告されたり、家財を隠せと助言されたり、知り合いの暴力団を紹介すると言われたことさえあった。こんなとき、本当に役に立つのは、正しい知識を持った相談相手である。そして最後に必要なのは、やはり自分の強い意志だった。[中略]四月二十二日、水田は、弁護士を頼まず自分の手で個人の自己破産申し立てをした。費用は二万円足らずだった。(ある連帯保証人の悲劇、p.156)

銀行とつきあうなら、分相応の銀行とつきあえと黒田氏は言う。中堅企業ならば成長を見守り、冒険にもある程度の理解を示してくれる地方銀行。中小企業なら金利は多少高いが、地元に密着し、トラブルが発生しても逃げ道がなく、言い訳も通用しない信用金庫、信用組合とのつきあいを深めろとアドバイスする。あるいは政府系金融機関を上手に利用する方法も知るべきだ。(ドキュメント「銀行被害」、p.164)

銀行は、もはや昔の銀行ではなくなったようだ。審査らしい審査もせず、貸すだけ貸して、今度は強硬かつ非情ともいえる回収である。やはり、冒頭の初老の男性が言っていた、「銀行員が来たら聞く耳を持つな。印鑑や書類は隠せ」という言葉には真実味があったのである。(ドキュメント「銀行被害」、p.183)

損失補填は、いまだ違法なものではなかったからである。偉そうなニュースキャスターを抱えるテレビ会社も、社会の木鐸だと自画自賛する新聞社も、株が下がればどうしてくれると証券会社を脅かして値下がり分を補填させたのだから、ヤクザが、「世間様」のやることをやらないはずがなかった。(かくして、エスタブリッシュメントとアンダーグラウンドの新たな均衡点が出現した!、山口宏、弁護士、p.318)

中小零細の経営者の仕事の大半は、資金繰りである。取引の細かいことは下の者に任せられても、資金の手当てだけは「社長」がしなければならない。こうして「社長」は一日中、金のことで頭がいっぱいになる。午後六時を過ぎても、金の心配が消えることはないが、とりあえず、足はネオン街に向かう。こうすることでしか、金のことを忘れられない「社長」は、寿司屋にホステスを呼び、依然として馬鹿高い勘定のクラブなるものに同伴する。今時、なぜそんなムダな金を、と一般人は思うが、一種の健康維持代らしい。(山口宏、弁護士、p.320)

二十世紀は、市場経済が飛躍的に発達した時代であったが、それと同時に、マーケットシステムに不可避的に伴う恐慌が繰り返された歴史でもあった。周知のように、それを解決したのは、何回かの戦争である。満ち足りているのであれば、破壊しなければ、需要は発生しない。これに代わる決定的な代替策がなければ、やがて、軍産複合体の悪夢が再び世界を覆うことになるのは必至のように思える。主要マスコミが、核廃絶や対人地雷廃棄の言論は野放しにしても、兵器産業全廃の言論を巧妙に封殺しているのは、そのための準備なのかも知れない。(山口宏、弁護士、p.327)

だが、私は過去の倒産から学んだことがあります。それは"逃げてはダメだ"ということです。若い時代の一回目、二回目はともかく、三回目の倒産で逃げたことが、どのくらいその後の人生にマイナスになっているか。逃げずに、踏みとどまっていれば、新聞配達などの回り道はしなくても新しい道が開けたはずです。債権者のみなさんの前に出て、頭を下げて、私を生かしてください、と誠心誠意お願いすることだ、と考えました。(逃げも隠れもしないで、堂々と借金を棚上げに成功する方法、pp.337-338)

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