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ルポ 貧困大国アメリカ II

ルポ 貧困大国アメリカ II
堤 未果
岩波新書、2010/1/21

「貧困大国アメリカ」の続編。前作でキーワードだった「行き過ぎた市場原理」を再びテーマに、リーマンショック・オバマ当選以降のアメリカを描く。

アメリカが一昔前とは大きく変わったということをうまくまとめて描いた本がこれまであまりなかったので、出版戦略的にブルーオーシャンといえる分野をついたと言えるのではないか。題名も「貧困大国」と一般のアメリカのイメージとはかけ離れた単語を使うことでインパクトを強めている。内容もしっかりとインタビューなど調査されているので、読み応えがある。著者の出自や川田龍平氏と夫婦であることなどを見るとかなり岩波の好きそうな人種だが、それを割り引いて読んでも、続編として非常によく書かれていると思った。「政権交代」というキーワードだけで盛り上がって、その後だまされたことに気づいても・・・というくだりは、日本の今の状況にもぴったりあてはまるが、著者がそこまで含意したかどうかはわからない。

1. {大学の経営難→学費値上げ、公的奨学金の縮小→自己破産の許されない高利民間学資ローンの拡大}→大学間格差と破綻する学生達
2. 企業年金の拡大→企業経営の悪化と倒産(ex. GM)→高齢者の生活苦+高齢者を養うためにワーキングプアとなる若者達
3. 民間医療保険による医療崩壊+国民皆保険制度導入の失敗→妥協したオバマ→まともな医療を受けられない一般市民と疲弊する医療現場
4. 借金漬けの囚人達(ex. 有料の日用品)+ホームレスを犯罪者として刑務所送り→刑務所人件費は第三世界より安く言葉もわかる優良労働者+刑務所リートは高利益産業:恐怖に支配される国民(テロ防止のための愛国者法など)

このホームレス人口の増加が刑務所人口の拡大につながっているのだ。[中略] 不況下で急激に増え続けるホームレス対策として各自治体が厳罰化を適用、ホームレスを犯罪者として取り締まり始めたことが明らかにされている。(p.182)
「問題は、この国の国民が恐怖にコントロール左列づけていることです。国民は「テロとの戦い」というキーワードにあおられて、ふくれあがる軍事予算と戦線拡大を黙認し、次々に現れる病気への恐怖から薬漬けになり医療破産している。学位がないとワーキングプアになると思いこまされ、法外な学費を払うために高利で借金をする。ホームレスになり刑務所に入った後もさらなる借金スパイラルが追いかけてくる、といった具合です。」「一部の人々をのぞいて、国民全てが借金漬けになってきていますね」「ええ、「国民総借金大国アメリカ」というわけです。一部の人々にとってみれば、より効率よく利益を生み出すシステムに近づいているとも言えますね」(p.193)
「そして今国民は、日常を脅かす凶悪犯罪への恐怖におどらされ、新たな刑務所建設や厳罰化を支持している。ある日突然転落した自分自身が、塀の向こうの巨大な工場を支える囚人達の一行に加わるかも知れないことなど夢にも思わずに、です。私たちはいい加減気づかなければなりません。こうした恐怖というものが作り出されるプロセスと、それによって恩恵を受ける存在のことを。國とはいったい何なのか?なぜこの國では私たちの税金が、学生よりも囚人を生み出すために使われているのか?犯罪を減らす最大の政策は「厳罰化」ではなく、「教育」です。[中略] アメリカが直面している危機は、金融危機などではなく、人間に投資しなくなったことなのです。[後略]」(p.194)
「自分が強く信じていたものが本当はそうでないとわかったとき、それを受け入れるのは辛いことです。思い入れが強ければ強いほど、違うと認めることで自分が否定されるような気がする。そんなとき、人は無意識に正当化する言い訳を考えて、自分を守るんだと思います。[中略] 今思えば、「政権交代」はチェンジのスタート地点にすぎなかったのに。[後略]」(p. 204)

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