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坂の上の雲(5)

坂の上の雲〈5〉 (文春文庫)
司馬遼太郎
文春文庫、1999/2/10

203高地を占領し、旅順港への砲撃によって旅順艦隊は全滅する。旅順要塞は陥落し、ロシア軍司令官ステッセルは降伏する。ロジェストウェンスキー率いるバルチック艦隊は前代未聞の大航海を始めるが、末期的な帝政ロシアの政治体制のためと同盟国フランスの非協力のため難航を極め、士気はゆるむ。一方、満州に展開する日本陸軍はロシアの撤退戦略にも助けられ、北上を続ける。

プレジデント09/12/14号の「日本の経営者が選ぶ」作品人気ランキングで、トップ10位に入る本はそこそこ読んでいたが、司馬遼太郎は読んだことがなかった。坂の上の雲がトップだったこともあり、読む気になったのだが、この第5巻は、確かに経営者が好きそうな話だ。乃木と伊地知率いる第三軍は203高地に目標を転じた後も損害を拡大させるばかりで全く攻略できない。そこへ総司令部から児玉源太郎がやってきて、彼らを一喝して作戦変更するや、それまで数ヶ月かかっても攻略できなかった旅順・203高地が数時間であっというまに陥落してしまう。ロシア側航海の記述もそうだが、本巻では、人を使う難しさを読む込むことができるので、経営者に共感できるところが多いのではないか。

児玉の怒りが、ふたたび上昇し始めた。[中略] 「参謀が、前線に行ったことがないというのはどういうことだ」(p.104)[中略] 乃木軍司令部の作戦と命令が、事ごとに、実情と食いちがいを生ずるのは、ひとつはここにあった。児玉はそれを痛烈に指摘し、「第一線の状況に暗い参謀は、物の用に立たない」と、切るようにいった。[中略]「いまから二、三の参謀をつれて前線へゆけ。前線の実情をよくつかんでこい。あす、わしもゆく。そのとき報告をきく」と言ってすぐ、「なにをぐずぐずしている。すぐゆけ」と、いった。(p.105)
「田中ァ、なにをぼやぼやしとる」と、児玉は田中国重少佐をふりかえるなり怒声を発した。その頭上を、砲弾が飛び去った。「馬鹿か」田中は、児玉の怒りの目標が自分のほうに転換されたことにおどろいた。「おぬしは将来、師団長にもなり、軍司令官にもなるはずの男だ。このように友軍が苦戦しちょるときに、適切な指揮に任ずるのが当然ではないか。しかるになにをぼやぼやと観戦しちょる。おぬしは外国の観戦武官か」(p.116)

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