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坂の上の雲(4)

坂の上の雲〈4〉 (文春文庫)
司馬遼太郎
文春文庫、1999/1/10

不利に進む黄海海戦は「運命の一弾」(p.60)とよばれるロシア艦隊旗艦の司令塔に命中した十二インチ砲弾でなんとか日本海軍の優勢で終わる。好古を含む陸軍は北上し、遼陽をめざす。
一方、旅順艦隊が日本海に出て日本輸送船を攻撃することを恐れ、海軍は旅順封鎖を続けるが、海を越えてやってくるバルチック艦隊に備えるため、早く帰国して整備したい。そのため、陸からの旅順港攻撃を陸軍に要請する。そのためには、旅順港を一望できる203高地を占領することが得策であると皆が考える中、第三軍司令官乃木希典と参謀長伊地知幸介はそれを拒否し、旅順要塞正面攻撃の無能無策により、数万の将兵を無駄死にさせる。

このあたりから、司馬の考え方が明らかになってくる。明治維新から日露戦争までは良い日本で、日露戦争を祖国防衛戦争と位置づける。、そこから太平洋戦争までは悪い日本、日本陸軍はとにかく悪者で海軍はまだまとも、同じ陸軍でも明治陸軍はまだ理性的で、昭和陸軍は精神主義で非理性的、明治日本陸軍では大山巌と児玉源太郎は善玉で乃木と伊地知は悪者、海軍重鎮の山本権兵衛は善玉、陸軍重鎮の山県有朋と寺内正毅は悪玉、といった考え。また、明治時代は天皇の力が大きかったはずなのだが、この小説を通して、明治天皇についてはほとんど言及されない。書かないことで天皇制を批判しているのか、擁護しているのか、そのあたりはよくわからない。司馬自身、太平洋戦争の陸軍少尉として同時期の日本上層部や軍部の無能ぶりを体験したため、そのような考えになるのは理解できるが、好き嫌いがはっきりわかれるのではないか。

昭和期のロシア陸軍とくらべて、昭和期の日本陸軍がだめだと比較するならまだわかるが、日露戦争におけるロシア海軍と昭和期の日本陸軍を比較して後者がだめだ、というのはさすがに無理な比較だろう。それくらい、日本陸軍への恨みが大きい、ということなのだろうが。

この点、スラヴ人が、日本の後年の対米戦争における陸軍首脳よりすぐれていたのは、「勝てない」という、冷静な判断をくだす実務家が多かったことであった。(p.326)

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