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蹴りたい背中

蹴りたい背中
綿矢りさ
河出文庫、2007.4.10(¥380)

 高校生になった私(長谷川)は、クラスのグループに入らず、同じ中学を卒業したクラスメートの絹代を通して世界とのつながりを保っている。しかし絹代も他のクラスメートとのつながりを大事にしていることで、私は孤独感をつのらせている。ふとしたことから同じようにグループに入らないでいるにな川に興味をもった私は、にな川の趣味につきあう。しかしそのうちににな川の持つ趣味の世界に自分がいないことにいらだちを覚え、言葉にならない感情を背中を蹴るという行動で表す。しかし、にな川は私の気持ちに気づかない。
 「さびしさは鳴る。耳が痛くなるほど高く澄んだ鈴の音で鳴り響いて、胸を締めつけるから、せめて周りには聞こえないように、私はプリントを指で千切る。細長く、細長く。紙を裂く耳障りな音は、孤独の音を消してくれる。」(p.7)という印象的な文章で始まる「蹴りたい背中」は、青春小説として私の気持ちの揺らぎを克明に描き出す小説であるが、同時に、高橋源一郎が文学界(2007.3号)で言うように、すべてを捉えて表現しようとする、作者の観察に対する信念が表現された小説でもある。ストーリーが平板という評価もあるが、少なくとも、19才でここまで書くのは才能だろう。
 2004年芥川賞受賞作。

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