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映画で入門カルチュラル・スタディーズ

映画で入門カルチュラル・スタディーズ
本橋哲也
大修館書店、2006.4.1

「カルチュラル・スタディーズは...私たち皆が好むと好まざるとにかかわらず、日常的にいつも囲まれて生きている力関係を考えること」(p.3)であると著者は説明する。そして、本書ではカルチュラルスタディーズにおける文化、すなわち「地域特有の文化様式や歴史的概念を本質的で自然なものとしてとらえるのではなく、それらが特定の社会的・政治的・歴史的力関係のなかで生み出され、それゆえ固定的ではなく、流動的で変革が可能なのだ」(p.4)ということを、18のテーマに沿って選択された映画を読んで説明を加え、それによって文化のあり方を述べていく。

たとえば、「ハリーポッターと賢者の石」は家族を、「シンドラーのリスト」はホロコーストを、そして「本当はこわいシェイクスピア」で性と植民地をキーワードとして読まれた「プロスペローの本」が本書では「帝国」をキーワードとして読まれている。ヒットした映画が取り上げられる一方、あまり目にしたことのない映画も取り上げられている。粗筋が付され、それに説明を加える形式なので、その映画を見たことがなくても違和感なく読むことができる。

章によって著者の政治的立場を感じさせる部分があったりするので、純粋な入門書とは言えないかもしれないが、今世の中で起こっていることを読むその「読み方」を見せてくれる点で、退屈せずに読める。


「つまり、身分証明を必要とし、かつそれがひんぱんに変わってしまうと困るのは、あなたを何らかの形で捕捉しておきたい支配的な社会の方であって、あなたの方ではない。」(p.5)
「『1492年10月12日、コロンブス新大陸発見』とは書かれていても、『同日、島の住民はこの見知らぬ旅人たちの奇怪な行為を笑い飛ばした』とは記されていないのである。しかし事実という点から言えば、どちらの陳述も重みは同じはずだ。書記言語によって記録されなかったからといって、起きた出来事を抹殺することはできない」(p.247)

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