『ブルースカイ』

『ブルースカイ』
桜庭一樹
文春文庫、2012/5/10、¥679(BO360)

正体不明の少女が、時代を超えて追っ手から逃れる話。第一部は1600年代のドイツ、マリーという少女が祖母と暮らす中、魔女狩りの嵐が吹き荒れて身の危険が迫る。その時、正体不明の少女が現れてともに逃げる。第二部は2022年のシンガポール。草食系の青年は、同世代の女性に圧倒されながら生活しているが、ある時突然正体不明の少女が現れ、つかの間だが一緒に逃げることになる。そして第三部で正体不明の少女の正体が2007年の鹿児島に住む17歳の青井ソラとわかる。彼女の日常生活が描かれたのち、突然の火山噴火で全てが破壊され、わずかな少年少女が時空の谷間を逃げる。そして時空管理人に追われ、全員が捕まってその時点に引き戻される。

中世ドイツの話はとても魅力的だったが、その話が大きく膨らまず、結局色々な伏線は回収されずに少女が追っ手に捕まって終わる、というのは話としてよくわからなかった。

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初春歌舞伎公演『通し狂言 世界花小栗判官』

2018/01/17:国立劇場大劇場(特別席1階13列36番)

『通し狂言 世界花小栗判官(せかいのはなおぐりはんがん)』 四幕十場

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盗賊風間八郎:尾上菊五郎
執権細川政元/万屋後家お槙:中村時蔵
漁師浪七/横山太郎秀国: 尾上松緑  
小栗判官兼氏:尾上菊之助
浪七女房小藤/万屋娘お駒/横山太郎妻浅香:中村梅枝
奴三千助:中村萬太郎
照手姫:尾上右近
瀬田の橋蔵:市村橘太郎

父を殺され、盗まれた足利将軍家の宝物を探すことになった小栗判官兼氏は首謀者風間八郎を追う。許嫁の照手姫と離れ離れになり、たまたま助けた万屋の娘に見初められ、そこにあると思われる宝物を見るための方便に娘と祝言を上げようとするが、そこで下女として働いていたのが照手姫だった。娘の母は照手姫の乳母だったこともあり、二人はようやく結ばれるが、嫉妬に狂った母に切られた娘の怨念により兼氏は業病を患う。熊野権現までなんとかきたところで、滝の霊水によって復活した兼氏は、八郎と対峙するが、そこへ現れた細川政元の命により、後日を期して別れる。

正月の華やかな舞台。瀬田の橋蔵の場面で「35億」「違うだろー」などが出て楽しめた。菊五郎はほとんど動かない芝居。さすがにお歳か。菊五郎は相変わらずよく、松緑の台詞回しがとてもよくなっていた。また、梅枝のお駒がよかった。

隣に団体で来ていたおじさんが、開始10分で寝始め、昼食休憩後酔って話し始めて係員に注意され、その後スマホをいじり始めて係員に注意され、またすぐに寝始め、休憩を挟んで気持ちよく寝続け、最後の5分で起きて「いやあ、何にもわからんな」と言ったのには笑った。

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『京都ぎらい 官能篇』

『京都ぎらい 官能篇』
井上章一
朝日新書、2017/12/13、¥842(有隣堂亀戸)

前著とは趣が違い、京都の裏面とも言える下半身の話。一言で言えば、武力を持たない天皇が美女を侍らせ、それを武士に与える褒美とすることで権力を保ってきた、というのが著者の主張といえようか。

しっかりした論拠はあまりなく、著者の印象論といった趣の本なので、軽い読み物として読めば面白い。

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『向う端にすわった男』

『向う端にすわった男』
東直己
ハヤカワ文庫、1996/9/1、¥756(410)

ススキノ探偵の短編集。映画をみてハードボイルドな気分になった男の話、口から出まかせに調子のいいことばかり言って生命保険詐欺を働いた男の話、知能の低い女を助けようとして大きなお世話だった話、ホームレスの息子が中央大学に入ったことから男に起きた悲劇、IT企業の社長・右腕が学生運動の活動家だったことから殺人を犯す話。

最後のIT企業の経営者と右腕が実は潜伏中の学生運動家の仮の姿で、それに気づかれたことから右腕が殺人を犯して消える、というなんとも言いようのない話が印象に残る。著者の書きぶりからあまり学生運動をよく思っていないことがわかる。

どれも秀逸で面白い短編集。

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『探偵は吹雪の果てに』

『探偵は吹雪の果てに』
東直己
ハヤカワ文庫、2004/2/10、¥886(BO460)

ススキノ探偵シリーズ。昔の女と病院で再会した俺は、彼女に届け物を頼まれる。北海道の田舎町に届けた俺は、町ぐるみの陰謀に巻き込まれる。

いきなり45歳になり、春子は子供を連れて出ていって、俺は相変わらずその日ぐらしをしている。そんな俺が昔の女のために一肌脱いだことから巻き込まれる事件。動きが鈍くなって格好悪くなっても一生懸命というところが本書の真骨頂か。町の住人の会話のしつこさが町の閉塞感をよく現していて、現実もそんなものなのかな、と少し悲観的になったが、話自体は面白く読んだ。

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2017年の10冊

2017年に読んだ98冊から選んだ今年の10冊。
体調が安定せず検査入院などあり、後半追い込んだが2冊足りなかった。今年は軽いものを多く読んだ。

1.『バブル:日本迷走の原点』:バブルの萌芽から最高潮に達し、崩壊するまで詳細に描かれた傑作。
2.『影の権力者 内閣官房長官菅義偉』:地方から出てきて政治家秘書からスタートし、官房長官に昇りつめた菅氏を分析した本。
3.『ゲンロン0 観光客の哲学』:東の集大成。久しぶりに東の本気を見た本。
4.『バッタを倒しにアフリカへ』:将来が約束されないポスドクだった著者が、一発逆転を狙ってアフリカに渡った経験談。
5.『ブルマーの謎: 〈女子の身体〉と戦後日本』:なぜブルマーが普及し、色々問題がありながら継続し、いつのまにか姿を消したか、を綿密な調査によって明らかにした本。
6.『最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常』:芸大生を妻に持つ著者が、芸大生に取材してその生態を描いた本。面白く描いた本というより、芸大生が面白いから面白くなった本。
7.『探偵はバーにいる』:映画でだいぶ宣伝していたので、どうせ面白くないだろうと敬遠していたが、読んで見たら札幌の空気感が感じられる探偵物としてとても面白かった本。
8.『京都寺町三条のホームズ 』1-7:京都の骨董屋にバイトとして働くことになった女子高生を主人公に、骨董屋の息子と二人三脚で様々な謎を解いていく本。
9.『ツバキ文具店』:鎌倉で代書屋をしていた祖母がなくなったことから、そこに戻って代書屋を始めた女性の話。鎌倉の観光案内にもなっていて面白かった本。
10.『活版印刷三日月堂』:祖父がなくなった印刷工場兼用の家に戻り、活版印刷を始めた女性の話。

最近は日常の謎系で、土地の観光案内を絡めた本が流行っているように思った。

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『アイスクリン強し』

『アイスクリン強し』
畠中恵
講談社文庫、2011/12/15、¥596(BO360)

明治維新により江戸が東京になった頃、築地の居留地で孤児として育った皆川真次郎は、西洋菓子屋風琴屋を開く。友人の元幕臣の警官や、成金のお嬢様沙羅に囲まれ、色々な事件に立ち向かう。

しゃばけシリーズは著者のふわっとした文体にあっていたが、本書はもう少しキレの良い文体でもよかったかもしれない。

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『ヒア・カムズ・ザ・サン』

『ヒア・カムズ・ザ・サン』
有川浩
新潮文庫、2013/9/28、¥529(BO310)

出版社に勤める真也は、物に触ると人の記憶が見える。同僚のカオルの父がアメリカから20年ぶりに帰国する。その設定から二つの違う物語を紡いでいる。

父親の気持ちがよく描かれていて、感情移入して読んだ。


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『機長からアナウンス第2便』

『機長からアナウンス第2便』
内田 幹樹
新潮文庫、2005/8/28、¥432(BO260)

A社の機長をしていた著者が、勤務中に体験したことを徒然に語ったエッセイ。JAL倒産の前の話なので、まだ牧歌的なところもあるが、戦闘機パイロットだった凄腕キャプテンの話など、面白く読んだ。

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『言ってはいけない 残酷すぎる真実』

『言ってはいけない 残酷すぎる真実』
橘 玲
新潮新書、2016/4/15、¥842(BO460)

知能は遺伝、美貌格差は3600万円、犯罪者の子供は犯罪者になる確率が高い、現代社会は教育すれば皆一定レベルの知識を獲得することができるという前提で成り立っているがそれは嘘、など身もふたもないことを根拠をあげて説明している。読んでいてあまり気分の良いものではなかったが、本当のことが書かれているという意味で読む価値があった。

●「知識社会」とは、知能の高い人間が知能の低い人間を搾取する社会のことなのだ。(p.72)

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